【読書感想文】『絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている』佐巻健男
久々に本を一冊読了したので軽く感想文を書いていきたい。
今回読んだのはこちら、佐巻健男氏著の『絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている』(ダイヤモンド社、2021年)。
高校生のころは日本史を選択し、世界史をおざなりにしていたツケを30歳間近になってようやく痛感し、世界史の知識を身につけたいと考えていた私の目の前に現れた一冊。世にいう完全なジャケ買いである。
佐巻氏は、理科教育や科学コミュニケーションが専門で、東京大学の非常勤講師もされているらしく、本作の他にも興味を引かれるタイトルの本を出版されているようだ。
世界史に加えて、化学も赤点スレスレを回避し続ける極めて優秀な高校生であった。最後に化学に触れてから10年以上経っている私にとっては、さすがに科学知識を忘れており(そもそも知らない)、このテーマでは難航するのではないかと懸念もした。しかし、ざっと目次に目を通すと、「カレーライスから見る食物の歴史」、「麻薬・覚醒剤・タバコ」など化学弱者にもとっつきやすそうな小テーマが並んでいる。
本編を読んでみると、なるほど「絶対に面白い」などという自信満々なタイトルはあながち大げさではなく、読むのが止まらなくなる。
本書全体を通じた構成として感じるのは、各小テーマを理解するための前提の前提のそのさらに前提になる知識から議論を始めてくれているなということ。はじめのほうは一見すると小テーマとはあまり関係ないようにも思える話題について触れているのだが、それが最終的にはその小テーマの結論へと収斂していく感じが気持ちいい。
時々舌を噛みそうになる長いカタカナの化学物質名などが登場するのだが、高校生のように暗記することを目指して読んでいるわけではないので、その物質名そのものを覚えることは本書の本質ではないと思う(化学強者には怒られるかもしれないが、化学弱者はそう割り切ってしまって気楽に読むのがいい。)。その物質が一体どんな物質であるのかは、佐巻氏がとても平易な言葉で簡潔に記載してくれているので、理解するのに特に苦労もなかった。
なんとなく聞いたことのある世界史上のイベントを化学という目線から説明されていることが本書の面白さの肝であろう。改めて考えてみると、世界史は全人類の営みの歴史であり、人類はいかに生活を豊かにするか(ときには、いかに争いに勝利するための力を身につけるか)を今も昔も考え続けてきたのであり、そのためには化学(科学)の発展は不可欠なのだから、世界史が化学と密接にかかわっていることは当然なのだが、「世界史」「化学」という個別の科目として学んでいるときにはこのような視点は完全に抜け落ちている。
本書は、高校時代にバラバラに身についてしまった「世界史」と「化学」の知識の垣根を破壊し、これらを一体化することに資するとともに、「学ぶ」とは何か、その本質を考えさせられる一冊であると思う。私のように高校時代にちゃんと勉強してこなかった遊び人、脳死状態で暗記に全集中していた方、知識の点と点が繋がって線になっていく感覚を味わうのが好きな方は、ぜひお試しあれ。
それでは、また次回。
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